歯の痛みの原因と受診すべきタイミング
突然の歯の痛みは、体からの大切なサインです。痛みがあると不安になりますが、正しい知識を持っていれば落ち着いて対処できますよ。日頃から歯の痛みについて理解を深めておけば、いざというときも慌てずに済みます。
目次
歯の構造と痛みの関係
歯は表面から順番に、エナメル質、象牙質、歯髄(神経や血管が通る部分)の3層でできています。一番外側のエナメル質は身体の中で最も硬い部分ですが、その下の象牙質は少し柔らかくなっています。痛みが生じるのは、このエナメル質や象牙質が傷ついてしまい、中の神経に刺激が届く時です。
特に象牙質には小さな管(象牙細管)が無数に通っていて、外からの刺激を歯の内部に伝える役割をしています。冷たい飲み物や熱い食べ物を口にしたとき、また酸っぱいものを食べたときに、その刺激がこの細い管を通じて歯の神経に伝わり、脳がそれを「痛い!」と感じる仕組みになっています。
さまざまな歯の痛みの違い
虫歯の進行による痛みの変化
虫歯が進むと、感じる痛みも変わります。初めのうちは冷たい飲み物や甘いものを食べた時に「チクッ」とした痛みを感じる程度です。でも放っておくと、虫歯菌がだんだん歯の内部(象牙質)を溶かしてしまい、次第に痛みが強くなります。ひどくなると、特に何もしなくても痛くなり、夜寝るときに痛みが増すこともあります。
鋭く一時的な痛み(知覚過敏)
歯ぎしりや力任せの歯磨きで歯の表面(エナメル質)が削れたり、年齢や歯周病で歯ぐきが下がって歯の内部(象牙質)がむき出しになると、知覚過敏になります。冷たい飲み物を飲んだり歯磨きをしたときに一瞬ズキッと痛みますが、刺激がなくなるとすぐに収まるのが特徴です。この痛みは、刺激が直接歯の神経に伝わることで起きています。
ズキズキと脈打つような強い痛み(歯髄炎)
虫歯が深くなったり、歯にひびが入ったりすると、細菌が歯の神経に入って炎症を起こします。これを歯髄炎と呼びます。この痛みはズキズキと脈打つようで、寝ると血のめぐりが良くなり、特に夜にひどくなります。温かい飲み物で痛みが増し、冷たいもので一時的に楽になることもあります。痛みが続くと、頬や顎が腫れることもあるため注意が必要です。
じわじわと続く鈍い痛み(歯周病)
歯ぐきや歯を支える部分が炎症を起こすと歯周病になります。歯ぐきが赤く腫れたり、歯磨きの時に血が出たり、じわじわとした鈍い痛みや噛んだ時の不快感を感じるのが特徴です。初期にはあまり痛みを感じないこともあり、気づきにくいです。症状が進むと歯がグラグラしたり、噛むと痛みを感じるようになります。
歯の痛みを放置するとどうなる?
歯の痛みは「体からのサイン」です。最初の段階で治療すれば簡単に済むことでも、放置すると大変なことになります。例えば虫歯が進むと神経まで菌が達し、長時間の治療や最悪の場合は歯を抜かなければいけなくなることもあります。
さらに怖いのは、歯の感染が顔や首などに広がり、ひどい炎症(膿瘍)ができることです。稀なケースですが、菌が血液に乗って全身に広がり、重い病気(敗血症)になることもあるので注意が必要です。
また、歯の痛みだと思っていたら実は蓄膿症(三叉神経痛)など、別の病気のこともあります。歯科医院でちゃんと診てもらえば、正しい治療を早めに始められ、痛みや治療にかかるお金や時間を抑えることができます。
急な歯の痛みへの応急処置と歯医者さんに行くタイミング
急に歯が痛くなったら、すぐに歯医者さんへ行くのが一番です。でも夜中や休日だと難しいですよね。そんなときは応急処置を知っておくと便利です。
知覚過敏なら冷たいものを避けたり、専用の歯磨き粉を使ったりすると痛みが和らぎます。一方、ズキズキと強い痛みの場合は市販の痛み止めを飲んだり、冷やしたりするのが一時的には効果的ですが、あくまで応急処置だと考えてください。
痛みが丸一日以上続く、顔や頬が腫れている、痛みで眠れないなどの場合は、できるだけ早く歯科医院へ行きましょう。また、急に痛みが治まった場合も注意です。これは神経が死んでしまった可能性があり、痛くなくても菌が進行していることがあるからです。
歯科医院での定期的な検診を受けて、歯の痛みを未然に防ぐことも忘れないでくださいね。